旅行業・観光業におけるAI活用の可能性
AI (人工知能)の技術は近年、急速に進化しており、あっという間に私たちの生活に浸透してきた印象があります。SiriやAlexaなどのアシスタント機能やお掃除ロボットなど、AIは日常生活の中でもすっかり身近なものになりました。
ビジネスにおいては、リモートワークの普及や対人業務の縮小も相まって、一層AIの導入が加速している傾向があります。あらゆる分野で実用化が進んでいるAIですが、特に観光業界はAIとの相性が良く、数多くの活用事例・成功事例があります。
AI導入で期待される効果や、AIの特性を活かした観光業界での事例を紹介します。
AIで事業者の課題を解決する
ビジネスでAIを導入する目的は、「業務の効率化」「合理化」が大きいのではないでしょうか。AIを活用することによって、旅行・観光業では以下のような課題の改善が期待できます。
人手不足の解消
サービス業にとって人手不足は、サービスの低下に直結します。とはいえ、繁忙期と閑散期、気候、イベントの有無などで業務量が変動する観光業界では、通年で安定的に人を確保するのが難しいのも現実。
そこでAIを活用すれば、繁忙時の人手不足の解消や、閑散期のコスト削減が可能になり、人員体制を最適化できます。
業務効率・生産性の向上
パターンの決まった業務を繰り返し行う処理はAIの得意分野。負担の大きい肉体労働や単純作業など、人間が長時間連続して行うことが難しい業務も、AIならば素早く、ミスなくこなすことができ生産性がアップします。定型作業やテンプレート化できる問い合わせの対応はAIの出番です。
品質の標準化
人間が業務を行う限り、どんなに優秀な人であってもヒューマンエラーをゼロにすることは不可能です。また、感情や体調によって業務の遂行に影響が出ることも避けられません。
調子の良い時は100点を出せるけれど、不調時は30点、といった波があるのが人間。満点とはいかなくても品質にムラがないほうがいい、常に70点をキープできれば良い、といった業務はAI向きと言えます。
安全性の担保
危険を伴う作業や、高所・水中での作業など人が立ち入ることが困難な現場では、人の代わりにAIが活躍します。故障予測・異常検知・事故の予防もAIの得意分野です。少人数や無人での店舗運営には、AIを活用した防犯カメラや自動レジが役立ちます。
AIで旅行者の顧客満足度を高める
AIの活用メリットは事業者だけに留まりません。旅行者のニーズが多様化している今、AIの活用は顧客体験を向上させるために効果的です。
時間や場所に縛られない
仕事をしていると、代理店の営業時間内に来店したり、電話を掛けたりが困難であることも少なくありません。また、繁忙期は電話をかけてもつながらない、混んでいて来店予約が取れない、といったストレスで旅行意欲が低下してしまうことも。自動応答やチャットボットの活用で時間外の対応範囲が広がれば、旅行手配にかかる負担の軽減につながります。
非対面手続きに安心感をプラス
コロナ禍で高まった非対面・非接触ニーズにより、オンライン消費が急速に拡大しました。
しかし、旅行予約の場合、「商品を購入して終わり」の一般的なオンラインショッピングとは大きく異なり、慣れていないと分かりづらい部分が多いのも事実です。
「移動」「宿泊」「観光」「食事」と検討事項が多く、1つのサイトで完結できなかったり、疑問点を調べるのに膨大な時間がかかってしまったり、選択肢が多すぎて比べ疲れてしまうことも……。
そんな時に、おすすめスポットを紹介してくれたり、チャットボットが質問に答えてくれたりといったケアがあれば、非対面予約の心理的なハードルを下げてくれます。
データの蓄積によりオファーの精度が高まる
収集したデータを学習・分析し、より精度の高い提案ができるようになるのがAIの強み。AI技術の発展と利用データの蓄積で、使い続けていけばいくほどユーザーの好みに合ったオファーが可能です。
AIがまるで専任の担当者のように心強い存在になる日も遠くないかもしれません。
AIの機能別活用事例
AIの主要な機能である「画像認識」「言語処理・音声認識」「レコメンド」「分析・予測」。それぞれを活かした旅行業・観光業での事例を紹介します。
画像認識
AIと聞いてまず思い浮かぶのが画像認識ではないでしょうか。膨大なデータを学習させることにより、昨今では一部において人間を超える高い精度での画像認識が可能になっており、ビジネスでの導入事例が非常に多い分野でもあります。
旅行業界においては、交通機関の利用や施設入場時の認証などで実用化されています。
有名な所では、空港の顔認証ゲート。入国審査の厳格な基準を維持しつつ、時間の短縮・人員削減といった合理化も実現しました。
なお、新幹線でも顔認証による改札機通過の実証実験が始まっています。
言語処理・音声認識
「言語処理」はテキストを言葉として処理する機能で、チャットボットなどに使用されています。観光サービスとしては多言語対応ができるのが大きな強みで、インバウンド誘致に向けたAIチャットボットが続々と構築されています。
最近では、音声で観光情報を案内してくれるAIロボットやコンシェルジュも登場。
「音声認識」は、音声をテキスト化する機能で、文字起こしなどに使われている技術です。会話ができるAIは「音声認識」でテキスト化した文字を「言語処理」で解析するという2つのステップで人の言葉を理解しています。
レコメンド
ECサイトの膨大なデータの中から、利用者の好みに合致するものを表示してくれる機能が「レコメンド」です。
観光関連では、アプリやWebサイトでテーマ・時間・予算・交通手段・年齢層などを入力すると、観光スポットを紹介してくれたり、コースを作成してくれるサービスがあります。
中には、予約サービスと連携して手配まで完了できるものや、SNSでシェアできるものもあります。外部サービスと絡めれば販促や広告など、可能性が広がるのがレコメンドサービスです。
分析・予測
ビッグデータの解析や、データ傾向からの未来予測は、AIの最も得意とすることです。
AIカメラ映像から観光客の滞留状況を数値化・対人平均距離を計測・混雑時間帯の予測を行い、配信することにより混雑回避に役立てている観光地があります。
また、宿泊施設などで需要により価格を変動させる「ダイナミックプライシング」も、AIの活用で需要予測の精度を上げたり、自動化したりと、より効果的に行うことができるようになります。
まとめ
AIの進化により「業務の合理化・効率化」と「顧客満足度の向上」を同時に進めることも夢ではなくなりました。旅行・観光業と親和性の高いAI。活用方法をぜひ探ってみてください。
参考文献:
成田空港.”Face Express”.
https://www.narita-airport.jp/jp/faceexpress/(参照2022-1-5)
JR東海.” 顔認証を用いた改札機通過の実証実験を実施します”.2021-9-30
https://jr-central.co.jp/000041542.pdf(参照2022-1-5)
JTB BÓKUNについて
JTB BÓKUNは、グローバル市場に対応した観光協会・DMO・体験事業者向けの予約・在庫管理システムです。
主な機能:
- 自社ホームページでの体験商品の販売
- ユーザー同士での体験商品の相互販売
- 海外OTA(Viator、KLOOK、GetYourGuideなど)との接続
- 体験商品の予約・在庫の一元管理(チャネルマネージャー)
- 販売データおよび顧客データの分析